腹式呼吸とは、胸郭(胸を覆う骨格)を使わず、肺が下に向かって膨らんでいく呼吸法(肺が下に膨らむことでお腹も膨らむ)ですが、胸式呼吸とはまさにその文字の通りで、胸郭を使った呼吸のことです。
息をたっぷり使って歌うためには、腹式呼吸が良いと言われているため、胸式呼吸は悪いと認識している方も多いのではないでしょうか。
実は、胸式呼吸をマスターすると代謝アップにつながり結果的にダイエット効果が得られることもあるため、むしろメリットの方が大きいのです。
目次
胸式呼吸とは
胸式呼吸(きょうしきこきゅう)とは、肺を横に広げるように息を吸う呼吸法です。息を吸うときに肋骨(ろっこつ)の間の筋肉、外肋間筋を伸縮させることで肺が横に広がっていきます。

腹式呼吸と胸式呼吸の違い
腹式呼吸では、息を吸うときに横隔膜が下がって内臓が圧迫されるため、肺が下に向かって膨らみます。
一方、胸式呼吸は、息を吸うときに肺が横に広がっていくため、肺の広がり方に違いがあります。
【腹式呼吸の特徴】
・息を吸うとき肺が下に向かって広がっていく
・副交感神経が優位になるのでリラックスできる
・筋肉の緊張をやわらげてくれる
【胸式呼吸の特徴】
・息を吸うとき肺が横に向かって広がっていく
・交感神経が優位になるのでリフレッシュした気分になれる
・適度な緊張感を身体に与えることができるのでエクササイズ向き
「歌うことを軸においた違い」でみる場合、腹式呼吸は、喉に負担がかかりにくくなるため、何曲歌っても声が枯れにくいのが特徴です。
一方、胸式呼吸は、喉や肩に力が入るため正しい発声を用いて歌うことができません。喉に負担がかかるため、数曲歌うと声が枯れる、声が出なくなることもあります。
胸式呼吸のメリット
胸式呼吸をすると2つのメリットが得られます。
交感神経が活発になる!
交感神経とは副交感神経と共に自律神経を構成しています。
交換神経が活発になると身体がシャキッとして血圧も上昇します。そのため朝目覚めた時に胸式呼吸をするとスッキリ目が覚めてきます。
周りの筋肉を柔軟に動かしてくれる
外肋骨筋を含め、胸の周りの筋肉を使う胸式呼吸は、肩甲骨の周りの滞りをすっきりと流してくれるため、肩甲骨周りが凝っている方におすすめです。
胸式呼吸のやり方

姿勢を正す(猫背にならないように)
姿勢が悪いと肺の広がりを抑えてしまうことになりかねません。
結果的に胸式呼吸をするのが難しくなりますから、背筋をスッと伸ばし、姿勢を正してから胸式呼吸を行いましょう。
足元にある空気を吸い上げるように息を吸う
自分の足元にある空気を吸い上げるように息を吸いましょう。
このとき、肋骨(ろっこつ)が広がっているかどうか確認してみてください。
胸に手をあて、息を吸うとき胸が上がっていく感覚があれば胸式呼吸ができていると判断できます。
肩を落とすように息を吐く
ため息をつくような感覚で「フーッと」息を吐き出します。
吐く時はゆっくりと、肋骨をもとの位置に戻すようにして下さい。
イメージがわかない人は深呼吸をやろう

もし、胸式呼吸のイメージがわかない、上手くできないと感じたときは、深呼吸をしてください。
実は、深呼吸は胸式呼吸なのです。
両手を横に広げ、息を肺いっぱいに吸ってから吐きましょう。
胸式呼吸を行う際の大事なポイント
胸式呼吸を行うときのポイントを確認しておきましょう。
お腹(横隔膜)を膨らませない
胸式呼吸は、いかに横隔膜を動かさないように呼吸をするかが大切です。
お腹が膨らもうとしている場合は、ぐっと手で押さえて膨らまないようにコントロールしてみましょう。
肋骨の動きに気をつける
仰向けに寝た状態か椅子に座って後ろで手を組むようにしてみて下さい。
どちらかの状態で息をゆっくりと吸い込むとお腹が膨らむこともなく肺に空気が入っていきます。
その時にぐぐっと肋骨が開くように動きます。これが正しい胸式呼吸ができている時の肋骨の動きです。
息をしっかりと吐ききる
息を吸うことばかり意識すると、息を吐くことの重要性を忘れがちですが、大切なのは息をしっかりと吐ききることです。
息の吐ききりが甘いと、次に息を吸うとき、肺に残ってしまった分の息を新たに吸うことができません。

逆に肺を空っぽにすることで、自然とその分空気が入り込んでいきます。吐ききることを意識してください。
胸式呼吸と腹式呼吸はシーンによって使い分ける
胸式呼吸はシャキッとさせたい時、腹式呼吸はリラックスさせたい時に使うと良い。それぞれの特徴を理解しておくことが大切です。
例えば、寝る前に胸式呼吸をしてしまうと、目が覚めてしまうことになりますので注意しましょう。
まとめ
胸式呼吸は、歌うときの呼吸法には正直、向いていません。
しかし、普段の生活においては、胸式呼吸を取り入れることで体に大きなメリットがあります。
腹式呼吸だけでなく、胸式呼吸も活用してより健康的な体づくりを目指してみてはいかがでしょうか。