「音楽で飯は食えない」とよくいわれるように、音楽に関連した仕事で生活していくのは非常に難しいイメージがあります。
しかし最近では、美容師や調理師のように専門学校進学を選択して、音楽に関する多様な職種の技術を身につけようとする人も増えてきました。
音楽系専門学校では、ミュージシャン育成コースだけでなく、音響照明のエンジニアや、マネジャーを養成する受講コースなどもあります。ミュージシャン志望以外の多くの卒業生は、学校と提携している企業に就職できるようです(参考:東放学園専門学校)。
ここでは対象をミュージシャン志望コースに絞って、経験者への取材をもとに音楽系専門学校の実態を探ってみました。
目次
音楽系専門学校で学べるor得られること
ひとことで音楽といっても学習範囲は広く深いものがあり、独学でマスターできるほど簡単ではありません。
専門的な技術や能力を身につけるためには実践も必要です。
音楽系専門学校では、これらのスキルを独自のカリキュラムで効率良く学習できます。
音楽業界でも重要なコミュニケーションスキル
コミュニケーションスキルは音楽とは関係がないと思われがちですが、音楽業界で信頼を得るためにも必要な内容です。
約束や時間を守ることや、期日に遅れないようスケジューリングするなど、社会人としての基本的なマナーや常識を学びます。
海外に姉妹校や連携したスクールを持つ音楽系専門学校がほとんどです。
海外の音楽業界とコミュニケーションを活性化させるために英会話を必須科目として学びます。将来アーティストとして海外進出をする際にも活用できるスキルです。
充実したカリキュラムで演奏技術が向上する

最も重要な音楽についての専門知識や演奏技術は、充実したカリキュラムに沿って効率よく学べます。講師は全員プロで活躍するミュージシャンです。
膨大な音楽理論や基礎知識をわかりやすい講義で学べる
音楽には多くのジャンルがあり、音楽理論の内容も膨大です。
音楽系専門学校では、広範囲にわたる音楽理論を系統的にまとめたわかりやすいカリキュラムが座学で学べます。講師の経験に基づいた話は、今後の音楽人生に生かせる貴重な内容です。
演奏技術は実践授業で飛躍的に進歩する
演奏能力を高めるカリキュラムは、受講時間の大半を占めています。
基礎的なドリルから奏法のコツまで、プロミュージシャンから直接指導を受ける機会はそうはありません。
求められるレベルのハードルはかなり高いようですが、生徒同士の連携やコミュニティができるので、初心者でも必ず上達します。
毎週のように課題曲が決められ、講師も含めた全員の前で演奏する実践的な講義も、かなりの時間をかけて行われます。
ギターやドラムなどの演奏技術を学ぶ生徒たちでランダムにバンドが組まれ、即興で演奏し評価されます。
その場で指摘を受けフィードバックすることで、ミュージシャンとしての資質が向上し、人前で演奏する場数を踏むことができるのです。
空き時間にスタジオで個人orバンド練習が無料でできる
専門学校に通う期間は音楽漬けの毎日です。生徒は、講義のない日でも学校に行って個人練習や情報収集をしているようです。
練習や録音のためのスタジオは十分に整備されていて、いつでも無料で練習できます。先輩と一緒にスタジオに入ってスキルを学ぶことも可能です。
アウトプット(発表)できる
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定期イベントやライブコンサート、ミュージカルなどを生徒だけで運営して、将来の仕事の疑似体験ができるカリキュラムがあります。
生徒たちが、それぞれの専門技術で作業分担し、スポンサー契約まで行って自主興行するのです。各セクションの協力なしにはイベントが成立しないことを知り自主性が養われます。
自分の演奏をYouTubeなどにアップする課題も独自のカリキュラムです。個人を商品として売り込む卒業後の活動に役立ちます。
同じ志の仲間ができる
同じクラスだけでなく、一年上の先輩たちとも触れ合える、ひらかれた雰囲気が専門学校の特長です。授業やカリキュラムの復習なども、同じ目標を持つ仲間たちと一緒にやれば、相乗的に技術が進歩します。
友情や仲間意識ができあがり、「協力して成し遂げる」社会人としてのコミュニケーションの重要性がわかるだけでなく、卒業後の人脈の基礎となるのです。
音楽業界とのコネクションができる
企業や業界とのコネクションで学校に仕事の要請が入り、日々情報が更新されるようです。課外交流で講師が所属するバンドのライブなどに参加すれば、音楽業界の実態や最新の情報を知ることも可能です。人脈の広がりも期待できます。
音楽以外のクリエイティブな仕事を紹介してもらえることや、業界とのコネクションで、有名楽器メーカーなど専門分野からの求人がくることもあります。
音楽系専門学校の選び方

音楽専門学校の学費は決して安くありません。平均で300万円から350万円です。学校を選ぶときは、オープンキャンパスなどの機会を利用して慎重に選びましょう。学校選びのポイントをまとめました。
設備やカリキュラムの充実度
まず、最新の設備が充実していることです。スタジオ数や、ライブホールも確認しましょう。次にカリキュラム。専門知識はもちろん、実習形式で演奏技術向上ができるかがポイントです。
社会人としての常識やマナーがカリキュラムに入っていることも重要で、卒業後の人脈形成に役立ちます。海外研修などのオプションも確認しましょう。
業界とのつながり
最後は音楽業界とのコネクションです。提携している企業の実態や講師の経歴なども聞いておきましょう。講師や卒業生とのつながりは、業界人との人脈作りの入り口として、卒業後に役立つのは間違いありません。
進学に向けての心得

素直さと積極性が大切です。入学前から演奏技術に自信があっても、おごることなく素直に講義をうけいれる気持ちがさらなる上達につながります。
夢や目標に対しても固執せず柔軟な姿勢でのぞみましょう。
学校と行っても社会の縮図のような場所ですから、待っているだけでは何も得ることはできません。積極的に情報を求める姿勢が就職への第一歩です。講師から仕事の話が来たら、考える前に即答するレスポンスの速さも求められます。
講師は、生徒のスキルを理解していますから「到底できないこと」は依頼してきません。自信を持って臨んでくださいね。
まとめ|プロへの道は近くのか?
音楽系専門学校に行かない方と比べると、プロミュージシャンとして夢をつかむ確率はかなり高いといえます。
B’zの松本孝之さんや、TMレボリューションの西川貴教さんも音楽専門学校出身です。他にも在校時に組んだバンドで全国ツアーするなど、卒業生は多方面で活躍しています。
プロミュージシャンは狭き門ですが、個人を商品として売り込むコツや業界とのコネクションの基礎は在学中に身につきますから、人脈を開拓していけば道は遠くありません。卒業後、ライブ活動を精力的に続けて人脈を広げるのも一つの方法です。
音楽系専門学校に進学する利点は、カリキュラムだけではなく、業界とのつながりや人脈を作る準備ができることではないでしょうか。
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