リバーブ、エコー、ディレイといった音に広がりを与えるための空間系エフェクターは空間の大きさや状況などを演出し、聴感上の“錯覚”を生み出します。
空間系のエフェクターとは、さまざまな残響を付加することによって、文字通りのその音の鳴っている空間をシミュレートするエフェクターのことです。
空間系エフェクターの使い方次第で音が変わってきます。
今回は、リバーブ、エコー、ディレイの違いについてご紹介します。
目次
リバーブとは?

リバーブはより複雑なディレイを集合させ空間での残響を作り出します。
簡単に説明すると、リバーブはディレイの集まりです。
普段、私たちが聴いている残響音(リバーブ)は、より複雑なディレイとの集合だと考えられています。
私生活の中にも残響音が
ごく単純な四角い何もない部屋の中にいるという状況でも、あなたの声やあなたが立てる物音には、数えきれないくらいの異なったディレイ・タイムを持った残響音が付いてくることになります。
そして、その残響音は部屋の大きさや形、壁や床の材質などによって音質や長さが変わります。
残響音2つの種類
残響音には壁や床に跳ね返って直接あなたの耳に届く初期反射を(アーリー・リフレクション)と呼ばれるものと、いろいろな場所に何度もぶつかっては跳ね帰った後でやっとあなたの耳に届く残響音があります。
エフェクターが登場する前の残響音を作っていたのは
このような残響音を作るのは、電気的なエフェクターとしてのリバーブが登場する以前は設計士や建築士の仕事でありました。
彼らは、さまざまな試行錯誤を繰り返しながら、床や壁の材質や角度を最良の残響音が得られるように決めていったのであります。
レコードの時代になってもしばらくは同じ状況に
電気的に音を記録するレコードの時代になっても、しばらくこの状況は変わりませんでした。
レコーディング・エンジニアはいったんマイクで拾った音をエコー・ルームと呼ばれる非常に長い残響を得られる部屋のスピーカーに送り、それをもう一度マイクで拾うことによってリバーブをコントロールしていたのです。
リバーブの参考楽曲例
リバーブの参考楽曲例にベンチャーズ(The Ventures)のダイアモンド・ヘッド(Diamond Head)があります。
ベンチャーズのサーフサウンドはアンプに内蔵されたリバーブ・エフェクトを使っています。曲全体をフワッとした幻想的な雰囲気で演出しています。
エコーとは?
一般の人がエコーといわれてすぐに思い浮かべるのは、“やまびこ”と呼ばれているものであります。
エコーは、“やまびこ”のように音を響かせる効果を出すエフェクターの一種です。
自然のやまびこを、電気的あるいは電子的にシミュレーションしたものが、エコーと呼ばれるエフェクターです。
音を遅らせる効果で最初に電気的にシミュレートしたものにテープ・エコーがあります。
元々は、オープン・リール・テープ・デッキの録音ヘッドと再生ヘッドの時間差を利用していましたが、それをより使いやすいエフェクターとして完成させたものです。
テープ・エコーの有名モデルにRoland Space Eco RE-201があります。
ディレイとは?
ディレイとは、反響音でシミュレートする空間系エフェクターの一種です。
山頂から遠くの山に向かって“やっほー”と叫ぶと、しばらく向こう側から“やっほー”という声が返ってきます。
音の速さは常温で秒速340mほどなので、隣の山までの距離が340mなら、あなたの声が向こうの山に届くまで1秒、跳ね返ってあなたの耳に聴こえるまでさらに1秒、合計で2秒の遅れ(ディレイ)として聴こえるわけです。
リピート・ディレイ
さらに、非常にはっきりとしたやまびこが得られる場所では、一度返った声があなたの立っている山に反射し、再び山と山の間を往復するということが何度も繰り返えされています。
そして、あなたの耳には“やっほー”という声が一定の間隔で徐々に音量を下げながら何度も聴こえてきます。これをリピート・ディレイと呼びます。
タップ・ディレイ
実際には、声が跳ね返ってくる山は1つではないことが多いです。
そこで、あなたの耳には複数の距離の異なる山々に反射したディレイ・タイムの異なる“やっほー”という声がバラバラに聴こえることになります。これはタップ・ディレイと呼ばれる効果です。
アナログ・ディレイとデジタル・ディレイ

ディレイ・エフェクトには主にアナログ・ディレイとデジタル・ディレイの2種類に分けられます。
アナログ・ディレイはメンテナンスに手間のかかるテープ・エコーに対して、メンテナンス・フリーのディレイとして開発されたのがアナログ・ディレイです。
アナログ・ディレイ
アナログ・ディレイでは、BBD素子と呼ばれる音を遅らせる回路を数珠つなぎにして、バケツ・リレーの要領でロング・ディレイを作り出しています。
デジタル・ディレイ
デジタル・ディレイは、テープの代わりにメモリーに音を蓄え、録音ヘッドと再生ヘッドの時間差を利用します。
入力された信号は、まずADコンバーターと呼ばれる回路を通って0と1のデジタル信号に変換されて、メモリーに書き込まれます。
そして、そのメモリーに書き込まれたデータを、決められたディレイ・タイムに従って読み出し、DAコンバーターを通して音声信号に戻して出力している原理です。
この原理自体はすべてのデジタル・エフェクターに共通のもので、ある意味では、すべてのデジタル・エフェクターはデジタル・ディレイの原理を応用して作られているともいえます。
それぞれの違い

それぞれの違いについて簡単に紹介します。
エコーとリバーブ
エコーはカラオケボックスで「もっとエコーをかけて」とよく使われているのでご存知だと思います。
カラオケボックスでは毎夜カラオケ・エコーが活躍しています。リバーブは、ある空間系で残響している感じの音にするエフェクトです。
「空間の大きさ」の設定次第で、小さなカラオケボックスで喋っている感じから、大きなコンサートホールで喋っているような感じにも出来ます。
エコーとディレイ
エコーとディレイは同系列のエフェクトです。
両方とも、音声の音量を下げさせたものを、一定間隔で残響させるエフェクトです。
やまびこの“やっほー”の残響させる間隔を短くしたものがエコーです。残響させる間隔を長くしたものがディレイです。
エコーは、主にボーカルの音声などに使用されます。
ディレイは、主にボーカル音声には使用されずに、エレキギターなどの楽器のエフェクトとして使用されます。
ディレイとリバーブ
ディレイは名称の通り遅らせる効果をもたらします。
リバーブは屋内で発生している残響を擬似的に再現したものです。
リバーブはただの残響なのに対して、ディレイは原音が鳴った後、追いかけるように一定間隔で音が遅れてついてきます。