技術的な上達だけでは、歌で人の心を揺さ振ることはできません。
人を惹きつける歌を歌いたいと思ったら、表現力を身につけることが大切です。
表現を身につけるためには、歌に抑揚をつけるのもひとつの方法です。
「抑揚」とは端的に言うと強弱・メリハリのことを言います。
とはいえ、「どうやって抑揚をつければいいかわからない」方もいるでしょう。
そこで今回は、歌に抑揚がない原因と改善方法についてご紹介します。
目次
始めから終わりまで同じボリュームで歌っている
歌に気持ちを込めているようでも、抑揚がないと感じる方は少なくありません。
自分の歌を聞いてみたらのっぺりしていた…なんてことも。
その原因のひとつには、曲の最初から最後まで常に同じボリュームで歌っていることが考えられます。

一般的には、サビが一番盛り上がるはずなのに、Aメロ・Bメロなどとサビのボリュームがずっと一定なため、聴き手はどこが盛り上がるポイントなのかわからない…となってしまうのです。
あなたの歌で聴き手に「歌詞や曲の情景」をイメージさせるには、"引き算と足し算を入れる"ことが必要です。
改善方法
常に全力100%で歌ってしまう方は、まずは力まないように心がけましょう。
ジャイアンリサイタルのように聞こえてしまいます…。
基本的には70%程度のボリュームに留めておくのがベターです。
引用元:https://www.tv-asahi.co.jp/doraemon/cast/
70%くらいがベースですが、AメロやBメロのやわらかい雰囲気を出したいフレーズの際には30%〜40%程度で歌って下さい。
そしてサビなどの盛り上がるポイントで90〜100%のボリュームで一気に出すのです。これだけで歌全体に抑揚が生まれます。
この時、声をただ小さくするのではなく、息を吐く太さを細くする、やわらかく吐くなど息をコントロールして調整することが大切です。
(声のボリュームを上げるときは、逆にいつもより息を太く遠くに飛ばすように吐く)
ボリュームの調整がうまくできないときは

大きなボリュームを出したいとき
サビなどの一番盛り上がるタイミングでボリュームを出したい時は、手を軽く前に出す仕草を入れてみて下さい。マイクを少し離す仕草でもOKです。
また、視界の中にある遠くの人や物に声を当てるつもりで歌うとボリュームが出るようになります。
声のボリュームを小さくしたいとき
優しい雰囲気で歌いたい時は、舌の中央に沿って声を細く遠くにゆっくり飛ばすように意識してみて下さい。

「はぁ」とため息をつくときを思い出してみてください。
「はぁ」とため息をついてそのまま「あ」の部分を伸ばすイメージで声を出すと、聴き手には聞こえるけれどボリュームは小さくやわらかい雰囲気の声になります。
子音で音程をとろうとしている

言葉には母音と子音が存在します。
母音とは「あいうえお」です。
ちなみに、その他は子音になり、「ん」は口を閉じて発音するため母音は存在しません。
抑揚がないと悩む方は、母音ではなく子音で音程をとろうとするケースが多いです。

例えば「ド」から「ミ」に音程を移動させる際に、歌詞の子音を使って音程を上げてしまうのです。
改善方法
ナチュラルに、まるで話をしているかのような抑揚をつけるためには、母音で音程移動をすることを意識しましょう。
例)「な」であれば「な」の子音よりも母音の「あ」で音程移動をする
例えば、「ド」から「ミ」に音程を移動させる際の歌詞が「ド」の時は「よ」・「ミ」が「る」であった場合はどうすればいいのでしょうか。
「よ」の母音である「お」で音程をやわらかく上げていき、「る」の母音の「う」で上げ切るように意識します。
音程が整いやすくなるメリットも
子音で音程移動をすると、棒読みのような"抑揚のない歌"に聴こえます。これは勿体無いことです。
母音で音程移動をすることで、自然な抑揚が生まれます。
また、音程が整いやすくなりますから、音程に悩む方にもおすすめです。
リズムをとっていない

抑揚がないと悩む原因には、リズムをとりながら歌えていない、そもそもリズムのとり方がわからないというケースも考えられます。
いくら母音やボリュームの強弱をつけても、リズムにのっているかそうでないかで、以下のような違いが生まれます。
- 歌の抑揚がナチュラルかそうでないか
- 曲にあった抑揚かそうでないか
抑揚がないと悩まれた際は、必ず、リズムをとっているかどうか確認することをおすすめします。
改善方法

リズムは"みぞおち"でとりましょう。
みぞおちは、おへそから指4本分ほど上のところにあります。
みぞおちを意識しながらリズムと取ることで、ポンプのような役割を果たし、息の流れに緩急をつけてくれるのです。

みぞおちを中心に、ドッジボールのボールを受け止めるようなイメージで体を内にいれます。(猫背にならないよう注意!)

胸を解放するように開いてください。この動作を繰り返しながらリズムをとります。
このようにリズムをとることで、吐く息に自然と強弱が生まれて声にメリハリがつき、結果的に歌の抑揚になります。
みぞおちでリズムをとって、ナチュラルな抑揚を身につけましょう!
みぞおちでリズムをとるのが難しいと感じる場合は
左右どちらかの足を軸にして膝でリズムを取るようにして下さい。
つま先でトントンとリズムを取ろうとする方もいるでしょう。
つま先では頭で考えながらリズムをとる癖がついてしまい、リズムのズレが生じてしまうのであまりおすすめできません。
膝である程度リズムを感じることができるようになったら、みぞおちに手を当てて意識するように歌ってみてください。
まとめ
歌の抑揚は、やりすぎかも…と意識しているくらいが実は丁度いいのです。
筆者も一生懸命に抑揚をつけたつもりが音源を聴いたら、のっぺりしていたという経験があります。
逆にこれやりすぎかな?と思うくらいの方が、周りから褒められました。
ぜひ、今回ご紹介した内容を参考に、大胆に抑揚をつけて歌ってみてください。
続けていくうちに、ナチュラルな抑揚が生まれるかと思います。